ヤマガタンver9 > 後悔先立たず・・②のつづき

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▼後悔先立たず・・②のつづき

金ちゃんを飼って2年目
まだ3匹ほど元気に生きていた
“魚体”も最初の10倍位にはなっていた

最後の最後まで金魚鉢で“魚生”を全うさせるのもいいが
元気なうちに野性に戻してやるのもいいのかなと思った
なにせ あの涙を見るのが忍びなかった

で 次男坊と話して川に戻してやることにした
最初は近くの小川に流してやろうと思ったが
姿を見れなくなると彼が悲しむかな-と思い
池とか沼とか いつでも会える場所にしようと考えた
そこで いつも休みに自転車で行って遊んでいた
あやめ公園の小山がある方の池に戻すことにした

日曜日の朝 彼は金ちゃん達に『さよなら』を言った
金ちゃん達は“水を得た魚”のように元気に泳ぎまわっていた
次男坊の寂しさの少し混じった笑顔を見て
これでよかったんだと思った
二人で『また来るから元気でね!』と言って別れた

次の日曜の朝 さっそく様子を見に行った
池を探してみたが 金ちゃん達の姿が見えない

『お父さん 金ちゃん どこにいったの?』と彼は言った

私はある光景を見て 体が凍りついていた
先週までいなかった鴨が池を我が物顔で泳いでいたのだ
野生に慣れていない金ちゃん達が鴨の餌食になったのは想像に難くない

『どうして鴨なんかいるの?』と聞かれた

私は答えに窮した

『・・うん 元気に生きてるよ』

答えになっていない

『・・・・・・・』

彼の後ろ向きの肩がかすかに震えていた
かける言葉が見つからなかった
彼は気丈に『そうだよね』といってくれたが
私の方に向き直ることはなかった


彼は それから二度と金魚を飼いたいとは言わなかった

でも 優しい気持ちはそのままで育ってくれている

馬鹿な父親を許してくれ
あんなに悲しい思いをしたこともさせたこともない
鴨はなんにも悪くはないんだが
あのときほど 鴨鍋にしてやりたいと思ったことはない

2009/10/06 08:32 (C) FPのひとりごと
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